病院薬剤師として10年ほど働くと、「このままの年収でいいのだろうか」と考えることがあります。
薬剤師は国家資格ですが、病院薬剤師の給料は、薬局やドラッグストアと比べて大きく伸びにくいと感じる人も多いのではないでしょうか。
私自身も、病院薬剤師として働きながら、感染制御認定薬剤師、抗菌化学療法認定薬剤師、周術期管理チーム薬剤師などの資格を取得し、ICT/AST活動、病棟業務、TDM、学会発表、論文投稿、大学講義などにも取り組んできました。
それでも、資格や実績がそのまま給料に反映されるとは限りません。
この記事では、病院薬剤師10年目前後のリアルな年収感、給料が伸びにくい現実、資格と年収の関係、そして30代以降に市場価値を高めるために必要な考え方についてまとめます。
※本記事は、私個人の経験をもとにした内容です。年収は地域、病院規模、役職、当直・残業の有無、賞与、手当などによって大きく変わります。
この記事で分かること
- 病院薬剤師10年目前後のリアルな年収感
- 1年目から10年目までの年収推移
- 資格を取っても給料が大きく上がりにくい現実
- 年収以外に得られた病院薬剤師としての資産
- 30代以降に市場価値を高めるための考え方
病院薬剤師10年目のリアル年収
私の病院薬剤師10年目前後の年収は、賞与や各種手当を含めて600万円台前半です。
月の手取りは、おおむね30万円台前半です。
もちろん、これは地域、病院規模、役職、残業時間、当直回数などによって大きく変わります。
私の場合、残業代は1時間あたり約2,500円、当直手当は1回あたり約1万円です。
そのため、年収には基本給だけでなく、残業代や当直手当も含まれています。
つまり、「病院薬剤師10年目で600万円台前半」と聞くと悪くないように見えるかもしれませんが、実際には当直や残業などの手当込みの金額です。
病院薬剤師の年収を考えるときは、単純な年収額だけでなく、当直の有無、残業時間、休日勤務、責任の重さ、認定資格や委員会活動への関わりも含めて見る必要があると感じています。
1年目から10年目までの年収推移
私の年収推移を振り返ると、入職1年目はおおよそ320万円前後でした。
1年目は賞与が満額ではなく、残業もほとんどできなかったため、年収としてはかなり控えめでした。
一方で、2年目になると賞与が満額支給されるようになり、残業もできるようになったため、年収は520万円前後まで上がりました。
ここだけを見ると、「1年でかなり年収が上がった」と感じるかもしれません。
ただし、これは基本給が大きく上がったというより、賞与が満額になったことと、残業代が加わったことの影響が大きいです。
その後は、毎年少しずつ昇給していく形でした。
私の感覚では、年収ベースで見ると、だいたい年間10万円前後ずつ上がっていった印象です。
10年目前後になると、賞与や各種手当を含めて600万円台前半になりました。
ただ、感染制御認定薬剤師、抗菌化学療法認定薬剤師、周術期管理チーム薬剤師などの資格を取得しても、年収が大きく上がった実感はありません。
資格を取ったことで業務上の役割や院内での関わりは増えましたが、給料にすぐ反映されるわけではないというのが、私のリアルな感覚です。
また、この記事で紹介している年収は、管理職や役職者としての年収ではなく、一般薬剤師として働いている中での一例です。
そのため、病院薬剤師の年収を考えるときは、「何年目か」だけでなく、役職の有無、当直・残業の有無、賞与、資格手当、病院の給与体系まで含めて見る必要があります。
今の年収に対する満足度は6点くらい
今の年収に対する満足度を10点満点で表すなら、私は6点くらいだと感じています。
600万円台前半という年収だけを見ると、病院薬剤師として極端に低いわけではないと思います。
ただし、その中身を見ると、当直、残業、病棟業務、感染症治療の相談対応なども含めたうえでの金額です。
特に、当直業務や病棟業務の負担は決して軽くありません。
私の場合、薬剤管理指導の件数は、他の薬剤師と比べても2〜3倍ほど多く担当している時期があります。
また、感染症治療に関する相談を受けることも多く、休みの日に連絡が来ることもあります。
もちろん、それ自体が嫌というわけではありません。
感染症治療の相談を受けることは、自分の専門性を活かせる場面でもありますし、医師や看護師から頼られることは病院薬剤師としてのやりがいにもつながります。
ただ、業務量や責任の重さを考えると、もう少し給与や手当として評価されてもよいのではないか、と感じる場面はあります。
一方で、病院薬剤師を続けていてよかったと思うことも多くあります。
患者さんの経過に、医師、看護師、リハビリスタッフ、栄養士などの多職種と一緒に関われることは、病院薬剤師ならではの魅力です。
薬の効果や副作用だけでなく、患者さんの状態が日々変化していく過程を見ながら、治療に関われる経験はとても大きいです。
また、患者さんから学ぶこともたくさんあります。
教科書や論文だけでは分からない、実際の治療経過、生活背景、薬剤選択の難しさを日々感じます。
だからこそ、病院薬剤師の仕事は、年収だけで簡単に評価できるものではないと思っています。
給料に不満を感じる場面はあります。
それでも、患者さんの治療に多職種で関われる経験や、臨床の現場で学び続けられる環境には、大きな価値があると感じています。
資格を取っても、給料が大きく上がるとは限らない
私の場合、感染制御認定薬剤師、抗菌化学療法認定薬剤師、周術期管理チーム薬剤師などの資格に対して、資格手当はありません。
そのため、資格を取ったからといって、毎月の給料が直接上がるわけではありませんでした。
ここは、病院薬剤師として少し複雑なところです。
資格を取るためには、勉強時間、研修参加、症例や実績の整理、申請書類の準備など、かなりの労力がかかります。
更新にも、継続的な学会参加や研修、費用が必要です。
一方で、私の病院では、認定資格を取得していれば、更新に必要な費用は全額病院負担です。
これはかなりありがたい制度だと思っています。
資格手当はないため、給料に直接反映されるわけではありません。
しかし、更新費用を病院が負担してくれることで、資格を維持しながら専門性を高めやすい環境にはなっています。
また、資格を取ったことで、給料よりも業務上の役割や院内での評価は変わったと感じています。
感染症治療に関する相談を医師から受ける機会が増えましたし、院内で「あの人に相談すればよい」と認識してもらえる場面も増えました。
資格を取る前と比べると、病院内での知名度や信頼感は高まったと思います。
つまり、認定資格は、すぐに給料を上げるものというより、病院内での役割を広げ、自分の専門性を見える化するものだと感じています。
もちろん、資格手当があれば一番よいです。
ただ、資格を取ったことで医師から相談されるようになったり、感染症治療や周術期、病棟業務により深く関われるようになったりしたことは、病院薬剤師として大きな価値があります。
資格は給料に直結しにくい。
でも、役割・信頼・院内での存在感には確実につながる。
これが、私が10年目まで働いて感じているリアルです。
認定資格と給料の関係については、以下の記事でも詳しくまとめています。
関連記事:
認定薬剤師を取っても給料が上がらない理由
病院薬剤師10年目で得られた「年収以外の資産」
病院薬剤師として10年ほど働いて感じるのは、年収だけでは測れない「資産」も積み上がっているということです。
私の場合、10年目までに以下のような資格や経験を積み上げてきました。
- 感染制御認定薬剤師
- 抗菌化学療法認定薬剤師
- 周術期管理チーム薬剤師
- ICT/AST活動
- 病棟業務
- TDM
- 学会発表
- 論文投稿
- 大学講義
これらは、毎月の給料にそのまま反映されるわけではありません。
しかし、病院薬剤師としての市場価値を考えると、大きな意味があると感じています。
特に、感染制御認定薬剤師や抗菌化学療法認定薬剤師としてICT/AST活動に関わってきた経験は、感染症治療や抗菌薬適正使用を重視する病院では評価されやすいと思います。
また、周術期管理チーム薬剤師についても、術後疼痛管理加算を算定するうえで関係する資格を取得し、実際に周術期領域に関わってきた経験は、大きな病院では重宝される可能性があると感じています。
病棟業務やTDMの経験も、病院薬剤師としては重要な実務経験です。
薬剤管理指導、腎機能を踏まえた投与設計、抗菌薬のTDM、医師への処方提案などは、病院で働く薬剤師としての基礎力を示す実績になります。
さらに、学会発表、論文投稿、大学講義などの院外活動も、すぐに給料へ反映されるわけではありませんが、自分の専門性を外に示す実績になります。
一方で、頑張っても給料には反映されにくいと感じるものもあります。
その代表が、委員会活動です。
医療安全、感染対策、薬事、業務改善など、病院薬剤師はさまざまな委員会に関わります。
どれも病院運営には必要な活動ですが、委員会でどれだけ頑張っても、それが直接給与に反映されることは多くありません。
この点は、病院薬剤師として働いていて少しもどかしく感じる部分です。
ただ、見方を変えれば、委員会活動も実績の見せ方次第ではキャリアにつながります。
単に「委員会に参加した」ではなく、何を改善したのか、どのような提案をしたのか、どのように院内の安全性や業務効率に貢献したのかまで整理できれば、職務経歴書や面接で伝えられる実績になります。
病院薬剤師の10年目は、年収だけを見ると物足りなさを感じる場面があります。
しかし、資格、病棟業務、ICT/AST、TDM、周術期、学会発表、論文投稿などを積み上げていれば、それは確実に自分の市場価値になります。
大切なのは、頑張った経験を「ただ忙しかった」で終わらせず、外から見ても分かる実績として整理しておくことだと思います。
感染制御認定薬剤師を目指す流れは、以下の記事でまとめています。
関連記事:
感染制御認定薬剤師ロードマップ
薬局やドラッグストアに転職すれば年収は上がるかもしれない
薬局やドラッグストアに転職すれば、今より年収が上がるかもしれないと考えたことはあります。
実際、大学時代の同期と話していると、手取りで月10万円ほど差があると感じる場面もありました。
手取りで月10万円違えば、生活の余裕はかなり変わります。
家計、貯金、投資、趣味、家族との時間の使い方まで変わってくる金額です。
そのため、「病院薬剤師を続けるより、薬局やドラッグストアに転職した方が生活は楽になるのではないか」と考えたことはあります。
ただし、年収だけで転職先を決めるのは危険です。
薬局やドラッグストアに転職すれば、収入が上がる可能性はあります。
一方で、勤務時間、土日勤務、店舗運営、物販、調剤枚数、管理業務など、病院とは異なる負担もあります。
また、病棟業務、感染症治療、TDM、周術期、多職種連携など、病院で積み上げてきた経験から離れる可能性もあります。
そのため、転職を考える場合も、「年収が上がるか」だけでなく、自分がどのような薬剤師として働きたいのかを一緒に考えることが大切です。
それでも私が病院薬剤師を続けているのは、今の働き方が、自分が子どもの頃に思い描いていた将来像に近いからです。
患者さんの治療経過に関わり、医師や看護師などの多職種と一緒に考え、専門性を活かして治療に貢献する。
感染症治療の相談を受けたり、病棟で患者さんと関わったり、学会発表や論文作成を通して自分の経験を形にしたりする。
そういった働き方は、私にとって「病院で働く薬剤師」としての理想に近いものです。
もちろん、給料だけを見れば迷うことはあります。
同期と比較して、収入面で差を感じることもあります。
それでも、今の仕事には、年収だけでは測れないやりがいや納得感があります。
病院薬剤師は市場価値を知っておくべき
病院薬剤師を続けるとしても、自分の市場価値を知らなくてよいわけではありません。
今すぐ転職するつもりがなくても、自分の資格や経験が、他の病院でどのように評価されるのかを知っておくことは大切です。
感染制御、抗菌化学療法、周術期、ICT/AST、病棟業務、TDM、学会発表、論文投稿などの経験は、今の職場だけでなく、外の病院でも評価される可能性があります。
病院薬剤師を続けるにしても、転職を考えるにしても、自分の市場価値を把握しておくことは、今後の働き方を考えるうえで大きな判断材料になります。
外の相場を知ることで、今の職場に残る判断にも納得感が出ます。
転職するためだけではなく、今の職場で自信を持って働き続けるためにも、自分の市場価値を把握しておくことは意味があると感じています。
市場価値を確認したい人へ
今すぐ転職するつもりがなくても、病院薬剤師としての経験や認定資格が外でどう評価されるかを知っておくことは大切です。
病院薬剤師向けの転職サイトの使い分けは、以下の記事で詳しくまとめています。
若手の病院薬剤師に伝えたいこと
10年目の病院薬剤師として若手に伝えたいのは、自分の理想像を追い求めてほしいということです。
病院薬剤師は、決して楽な仕事ではありません。
当直、病棟業務、委員会活動、感染症治療の相談対応、学会発表、論文作成など、給与には見えにくい負担も多くあります。
資格を取っても、すぐに給料が大きく上がるとは限りません。
それでも、自分が「こういう薬剤師になりたい」と思う姿があるなら、その理想像を大切にしてほしいと思います。
私自身、薬局やドラッグストアに転職すれば、今より収入が上がるかもしれないと考えたことはあります。
大学時代の同期と比べて、手取りに差を感じることもありました。
それでも病院薬剤師を続けているのは、今の働き方が、自分が子どもの頃に思い描いていた将来像に近いからです。
患者さんの治療経過に関わり、医師や看護師などの多職種と一緒に考え、自分の専門性を活かして治療に貢献する。
その働き方に、私は大きな意味を感じています。
一方で、理想だけでは働き続けられないのも事実です。
だからこそ、若手の病院薬剤師には、理想を追い求めながら、同時に社会や病院にとってニーズのある人物を目指してほしいと思います。
感染制御、抗菌化学療法、周術期、病棟業務、TDM、学会発表、論文投稿など、自分の強みになる領域を少しずつ積み上げる。
資格を取るだけで終わらせず、実際の業務改善、症例対応、教育、研究、発表につなげる。
そうすることで、今の職場の中でも、外の転職市場でも評価される薬剤師に近づけると思います。
もう一つ伝えたいのは、日々の業務を「ただ忙しかった」で終わらせないことです。
病棟業務、TDM、感染症相談、委員会活動、学会発表、論文作成などは、整理すれば自分の実績になります。
まずは、自分が関わった業務や介入を記録し、職務経歴書に書ける形にしておくことが大切です。
資格を取るだけでなく、実績として見える形にする。
そして、今の職場に残る場合でも、自分の経験が外でどう評価されるのかを知っておく。
それが、30代以降の病院薬剤師に必要なキャリア戦略だと思います。
自分の経験を整理したい人は、以下の記事も参考にしてください。
関連記事:
病院薬剤師向けの職務経歴書テンプレート
まとめ|病院薬剤師10年目は、年収だけでなく市場価値を見直す時期
病院薬剤師10年目の年収は、決して低すぎるとは言えないかもしれません。
しかし、当直、病棟業務、感染症治療の相談対応、委員会活動、学会発表、論文作成などを含めて考えると、もう少し評価されてもよいと感じる場面はあります。
資格を取っても、給料がすぐに大きく上がるとは限りません。
私自身も、感染制御認定薬剤師、抗菌化学療法認定薬剤師、周術期管理チーム薬剤師などを取得しても、資格手当として給料が大きく変わったわけではありません。
それでも、資格や実績は無駄ではありません。
医師からの相談が増えたり、病院内での知名度が上がったり、学会発表や論文投稿につながったり、自分の専門性を外に示せるようになったりします。
病院薬剤師は、給料だけを見ると物足りなさを感じることがあります。
それでも、病棟業務、ICT/AST、TDM、周術期、学会発表、論文投稿などの経験を積み上げれば、市場価値を高めることはできます。
大切なのは、ただ忙しく働くだけで終わらせないことです。
自分が何に関わり、どのような成果を出し、どんな専門性を積み上げてきたのかを、外から見ても分かる形に整理しておくことが重要です。
病院薬剤師として理想を追い求めること。
社会や病院にとってニーズのある人物になること。
今の職場に不満がなくても、自分の市場価値を知っておくこと。
この3つが、病院薬剤師10年目を迎えて私が感じている、これからのキャリアに必要な考え方です。


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